恋人ごっこ幸福論
周囲は彼をそんな風に言うし、確かに私もいつも素っ気ない対応しかされたことない。
…でも私はあの日の優しい顔を知ってるから。
どんなに言い方がきつくたって本当はそれだけじゃないって分かってるからいいんだ。
そんなわけでめげずに毎日通っては、こうして橘先輩に話しかけているのだった。
「やっほー緋那ちゃん」
「菅原先輩」
そうこうしていると、ひょいと片手をあげて背の高い男子生徒がこちらへ近づいてくる。
菅原俊成先輩、男子バスケ部の2年生だ。
「今日も橘に会いに来たの?」
「はい!少しでもいいから顔が見たくて」
「君は本当に橘に一途だね…!俺はありがたくて泣けてくるよ…!」
そして“自称”橘先輩の大親友。
菅原先輩は毎日橘先輩に会いに来る私に、とても気さくに話しかけてくれる人なのだ。
「で?今日の橘はどうだった、緋那ちゃん」
「はい、今日もかっこよくて目が離せないし、あ、シュートしたとこは見逃しちゃったんですけど…でも私は何より味方にどうパスを回せば最適かよく考えてるんだなって気づいて!気づいたらとにかくかっこよくて仕方なかったです!」
「またピンポイントでくるね~でも分かるよ!橘パス上手いんだよね~目の付け所良いわ」
私のしょうもない話もしょっちゅう聞いてくれるし、私が橘先輩を好きなことを本気で歓迎してくれている。
橘先輩の部活以外での様子とかも教えてくれるし、有難いのはむしろこっちの方。本当凄く良い人だ。