恋人ごっこ幸福論
「お嬢さん達~!アイスどれにするかじゃんけんで決めるよ~」
「そういやそんなルールにしたわね」
「あたし絶対ハーゲンダッツだから」
けれど菅原先輩からアイスじゃんけんの誘いの声がかかると2人共あっさり止めて菅原先輩の方へ行った。
どのアイスにするか見ている2人の様子をこっちから見ていると、その傍で関心薄そうにしている橘先輩と目が合う。
「神山はアイス確認しなくていいの?」
「私は別にどれでもいいから大丈夫です」
「ふーん、そう」
そう言いながら橘先輩は立ち上がると、こっちに近付いてきて私の隣に腰を下ろした。
何故、わざわざ私の隣に座り直したのだろう。
「先輩もアイスは…」
「余り物でいいよ」
「そうですか…」
「うん」
会話が終わってしまっても何か言いたげの様子で、じっと見つめられる。
らしくない、どうしたんだろう。
彼の考えが分からずつい首を傾げるとふいっと視線を逸らされてしまう。
ええ、何か駄目だった?
もしかして私が鈍感だったのだろうか、慌てて問いかけようとしたとき。
「テスト終わったら、デートしようか」
囁くような声で、さらっと告げられた言葉につい彼の横顔を凝視する。
一見すると、いつもと変わらないポーカーフェイスにも見える。けど、どこか照れているようなぎこちないような感じがした。