恋人ごっこ幸福論
「そういえばお昼ご飯どこにしたのか聞いてないですよね?」
「あー言ってなかったっけ。この辺のカフェで良いとこあるらしいからそこ行こうと思ってる。ほらここ」
「あ、美味しそうですね」
スマホで表示されたグルメサイトか何かのページを見せてもらうと、パスタやキッシュのランチプレートなどの洋食系のカフェだった。
数日前、そういえば何気ない会話の中で「和洋中ならどれが好き?」と橘先輩に聞かれたな。そのとき確か洋食が好きって答えた気がする。
だからここにしてくれたのかな、橘先輩が選んでって言ったのに結局私の意見聞いてくれてる。
こういうことしてくれるから、また好きになるんだよな。
凄く嬉しいけど橘先輩の意見を優先してほしかったな、何も考えずに答えてしまった数日前の自分が恨めしい。
とにかく私も橘先輩にドキドキしてもらえそうなことをしてみなくちゃ、と思うけれどそもそもデートってだけでドキドキして、何をすればいいのか分からなくなってくる。
「人気の店っぽいからこの時間混んでるだろうけどいい?」
「はい、橘先輩がそこに行きたいなら…是非」
「行きたいからここにしたんだよ。じゃ行こう」
ほら、また私が気遣いに申し訳なくなってることに気付いてる。
早速嬉しいことばかりで舞い上がってしまいそう、頭の中はふわふわとした都合のいいことしか考えられなくなりそうだ。