恋人ごっこ幸福論





「ところで橘、何もう練習戻ろうとしてんの?」

「は?」


いつの間にか背を向けてこの場から離れようとしていた橘先輩をすかさず呼び止めると、菅原先輩ががしっと肩を抱く。



「橘さ、こんな健気にお前に会いに来てくれる子なんかいないよ!?もうちょっと親密にならないと親密に!」

「え、別にいいわ」

「よくない!ちゃんと向き合え!そんなんだからお前はみんなに素っ気ないだの何だの言われんだよ!」

「菅原先輩、私そろそろ今日も帰るので。大丈夫ですよ」

「え、今日ももう帰っちゃうの?」



そういえば、と思い出して声をかけると菅原先輩は橘先輩に詰め寄るのを止めて吃驚する。



「はい。私家のことしなくちゃいけないから、それじゃ」



ペコっと頭を下げて菅原先輩に挨拶した後、今度は橘先輩の方に向き直る。



「明日も、また来ます!練習頑張ってください」

「はあ」

「それでは、失礼します」

「じゃ、私らもこれで」

「おつかれっす」

「え!?ちょ、おつかれさまー…」



ささっと英美里ちゃん、紗英ちゃんも挨拶して3人で体育館を後にした。




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