恋人ごっこ幸福論





…それにしても、こんなかっこいい人とデート出来る日が来るなんて思ってもみなかったな。しかも曲がりなりにも彼からのお誘いで。

隣を歩く横顔を見つめているとつい脈絡も無く好きって言ってしまいそう。今口に出してしまったら苦い表情をされそうだからなんとか抑え込んだ。




「(手、繋ぎたい)」



ふと、彼の左手に目がいくとそう思った。

色々アプローチでしてきたけれど、こんなにはっきり触れたいと思ったの初めてかもしれない。


初めてのデート、大好きな人とのデート。

嬉しくて嬉しくて、いつも以上に好きが溢れてしまいそうになっている今だから触れ合いたいと思ったのかもしれない。

以前無意識に手を繋いだ(というより握った)ことはあるけれど、意識的に手を繋いだことはまだない。



この前はからかわれただけだったけど、デート中に手を繋ぐんだったら、橘先輩も少しはドキドキしてくれないかな。

そこまでは無くても、何かしら進展するきっかけにはなるんじゃないか。



「橘先輩手つ、」

「?ん、何か言った」



いつものように「手を繋ぎたいです」って要求を口に出してしまいそうだったけれど、そこまで言いかけて止めた。

さっき橘先輩に「いつも直球だよな」って言われたのを思い出したから。


今日は橘先輩をドキドキさせたいんだ、だったら直接お願いするんじゃなくていつもと違う作戦をした方がいいんじゃないか。

いつものやり方だときっとからかわれるだろけど、何も言わずに不意打ちに手を繋いだら。

橘先輩だって私がそうするとは思わないだろうし、ドキッとしてくれるかもしれない。



「…なんでもないです!ランチ楽しみですね」

「あっそ。あ、ここだ」



だから今日は、”手を繋ぐこと”を1番の目標に頑張ろう。

勿論他にもチャンスがありそうだったらアプローチしていきたいし、何より一緒に楽しむことを忘れないことが前提だけど。


そんなことを考えていると、カフェに到着したのでデートに集中することにした。




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