恋人ごっこ幸福論
「じゃあ私今日は中丸屋よって帰るからここで」
「あら、そうなの。今日も何か安いの?」
「うん。なんと卵が1パック98円!限定だから急がなきゃ」
「本当緋那ちゃんは偉いよね、毎日家帰って家事全般1人でしてるんだもん」
「偉くないよ。そんな人世の中にいくらでもいるもん」
私の家は、祖父との2人暮らし。
小さな半導体工場を経営している祖父に代わって、家のことはできるだけ私がこなしてきた。
勿論学校の課題もしないといけないし、あまり放課後は遊んでいる時間はない。
それでも大好きな橘先輩に会う時間だけは作りたいから、いつも部活の少しの時間だけ見学しているのだった。
「無事に卵買えてよかった」
今日はお祖父ちゃんの好きなバターライスのオムライスにしよう。ラッキーなことに鶏肉も安く買えたことだし。
家に着いたらまず洗濯取り込んで、お風呂掃除しなくちゃなとかあれこれやることを考えながら夕暮れで眩しい帰路を歩いていく。
少し前まで誰も自分のことを心配なんてしないなんて言ってたけれど、祖父との関係はまずまずだ。
高校生の祖父にしてはまだ若い方だとはいえ朝から晩まで働いて私には苦労の無い生活をさせてくれているし、両親のいない自分に良くしてくれていると思う。