恋人ごっこ幸福論
「俺は…神山がただ一生懸命アプローチしようと頑張ってる姿が充分悪くないな、って思ってるってこと」
「え…」
「言ってなかったけど神山と付き合ってみようって思った理由にさ、そんな一生懸命で素直なとこが好感持てたからってのもあんだよ。
お前は直球なだけじゃ駄目だって思ってるのかもしれないけど…俺はそんなとこが良いなって思ってるよ」
まあ、それが好きに繋がるかは分かんないけどさ、と付け加える橘先輩は少しだけ照れているように見えて。冗談めいた様子もない、間違いなく本心で言ってくれているようだった。
良いな、なんて。
一生懸命なとこに好感持てるって、そんなこと言って貰えると思わなかった。
自分では不器用で、要領が悪くて必死にならなきゃどうにもならないくらい駄目だと思っていたのに。上手く立ち回れない自分のことも含めて、そう言ってくれるなんて。
「でも……全然ドキドキしてくれないじゃないですか」
「お前程なんでもかんでも意識しないだけだよ。それに…人の目があるしなるべくそういうの出さないようにしてた」
「え、沢山ドキドキさせてって言ったのにそれずるくないですか!?」
「まあそうだけど」
反論するとあっさり認められて、ちょっと納得がいかない。
私が何にでもときめきすぎなことは事実としてもそんなのない、だからあーんしようとしても止められたんだ。全然上手くいかなくてずっとモヤモヤしてたのに。