恋人ごっこ幸福論
「あ、」
丁度角から曲がってきた2人の女子生徒と目が合って。
「…ストーカーちゃんじゃん」
「…こ、こんにちは」
その女子生徒というのは、5月頃橘先輩に会いに来る私を“ストーカーちゃん”と呼んで嘲笑っていた先輩女子2人だった。
あれ以来バスケ部を見学しに来なくなったから、一度も会っていなかったけれどまさかこんなところで顔を合わすとは。向こうも声をかけてくるものだから、私も思わず挨拶してしまった。
「相変わらず元気そうじゃん、まだバスケ部行ってんでしょ?」
「…は、はい」
「飽きずによく行くねぇ」
な、なんでこの人達世間話してくるんだろう。一応返事するけれど、はっきり言って訳が分からない。
「てか噂で聞いたんだけど橘くんと付き合ってんでしょ?あの橘くんが誰かと付き合うなんて吃驚したけどやるじゃん」
「は、はあ…」
「ちょっと、さっきからひぃちゃんに何のつもりなんですか?」
背後で聞いていた英美里ちゃんが先輩女子2人に突っかかっていく。まずい、これは揉める。
「あの、私達もう行くので。すみません」
これ以上また面倒なことにならない内に体育館行こう。
ペコッとお辞儀だけして、睨み付けている英美里ちゃんと紗英ちゃんを連れて退散しようとしたとき。