恋人ごっこ幸福論
「ありがとう…ストーカーちゃん」
「ストーカーじゃなくて神山です」
「神山さんありがとう…」
何度も頭を下げて、この前からは想像のつかないような恭しい態度でお礼を言うと、彼女達は去っていった。
「一体なんだったんだろね」
「図々しい人達だったってことは分かるけどね~」
呆然と体育館へ先に向かった彼女達を見て紗英ちゃん、英美里ちゃんが口々にそう言う。2人共心配してくれてたからなのか、あまり腑に落ちないような表情をしていた。
「でも緋那ちゃん、許してよかったの?」
「え?」
「あの人達、橘先輩が緋那ちゃんに謝れって言わなかったら多分結局謝ってこなかったんじゃないかな。絶対緋那ちゃんにしたこと反省なんてしてないと思うけど」
「あー…そうだね」
心配してくれる紗英ちゃんに思わず苦笑する。
「別にあの人達が私にしたことを本当はどう思ってるかは別にどうでもいいの。とりあえずでも謝ってくれたしもういいかなって」
「でも、」
「あの人達の嫉妬する気持ちも分かるし、橘先輩がさほど気にしてないなら私もいいんだ。
別に自分を悪く言われることに関してはどうだっていいし、あの人達はまだ真っ向から言ってくるだけまともだと思ったから。だからもういいの」
「ええー、そうかなー…」
形だけでもきちんと謝罪するくらいどこかで悪いことをしている自覚があって、正々堂々私に謝るくらいならそんなに気に病むものでもない。
……これくらいなら、今までの経験に比べたら全然大したことないから。
「まあ、ひぃちゃんが良いなら私はいいわ」
「そうだね。じゃあたしらもさっさと集合するか」
「うん」
2人も無事納得してくれたところで、私達も体育館に向かっていった。