恋人ごっこ幸福論
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夏祭り当日、集合時間よりまだ少し早い夕方。私と紗英ちゃんは英美里ちゃんの家に集まっていた。
着付け教室をしている英美里ちゃんママが、今日花火大会に行くと聞いて浴衣を貸してくれると言ってくれたのだ。
聞いた時は申し訳なくて戸惑ったけれど英美里ちゃんに、
「せっかく花火大会に行くなら浴衣で可愛くしたいじゃない?それに橘先輩にも見てもらいたいでしょ?」
なんて言われてついお願いしてしまった。
わざわざ2人分の着付けもママさんが快くしてくれて、今は英美里ちゃんがヘアメイクをしてくれていた。
「ありがとう英美里ちゃん。自分の用意もあるのに私達の分までヘアメイクしてくれて」
「いいのいいの!私人の髪弄るの好きだから。はい、ひぃちゃん出来たよ!」
「すごい…やっぱり器用だね」
英美里ちゃんがしてくれた編み込みの入ったアップヘアを鏡で見て、手際の良さに改めて感心してしまう。
よく可愛いヘアアレンジしてるから期待していたけど、英美里ちゃんに任せて大正解だ。
「いつもと違う姿はドキッとしやすいんだって。あの人感情薄そうだけどこれだけ美人なら大丈夫ね」
「そうかな?確かに凄く綺麗にしてくれたけどそれは分かんないよ」
「なーに言ってんの!かわいいのは本当、自信もって。これでいっぱいアピールしよ!」
だーいじょうぶ!と親指を立てる英美里ちゃんの得意気な表情を見ていると、なんだかそんな気がしてくる。