恋人ごっこ幸福論
「そうだよね、少し期待しちゃおっかな」
たまには無理してアピールせずにちょっとだけ肩の力を抜いてみるのも有りだよね。大丈夫だって少しくらい自惚れるくらいの日があってもいい。
…それにこの前橘先輩が"好感持ってくれてる"って言ってたしね。
絶賛着付け中の紗英ちゃんも頷いてくれるし、自信持とう。なんたって2人が言ってくれてるんだから。
「そうだ、花火大会行くって言ったら花火の席パパが当たったからってくれたの。良いとこで観れるわよ」
「まじか、英美里ちゃんパパ太っ腹!ありがとう」
「ありがとうございます、お金は…」
「あらいいのよ~元々英美里ちゃんが花火大会行くだろうからって買ってた分だし安い席だからいいの!お代の分だけ楽しんで来てくれたらいいからね」
「じゃあ…ありがたく楽しませて頂きます」
花火大会の席なんて簡単に取れないだろうしなんだか申し訳ないけど…。
かと言って使って貰う気満々の英美里ちゃんママの申し出を断ることも出来ず。有難く受けとることにした。
「でも男の子と夏祭りなんて良いわねえ~青春だわぁ」
「まあ私とさぁちゃんからしたらただの先輩だけどね」
「でも良いじゃない~楽しんで来てね」
「「「はーい」」」
英美里ちゃんママに見送られると、ようやく薄暗くなり始めた夜道を歩いて3人で花火大会会場へ向かう。
道中同じように浴衣姿の人もちらほら見かけるとつい目がいってしまって、今日が花火大会なんだって改めて実感する。