恋人ごっこ幸福論
「去年は俺も部活の仲間と一緒に来たんだよ~今日もそこらにいるんじゃない?」
「あたしの友達もSNSに上げてるわ、他にも知り合い居そうっすね」
「みんなやっぱり花火見に来るよね~」
英美里ちゃんが友達と話している様子を眺めながらそう言う菅原先輩と紗英ちゃんの話を聞いていると、なんだか胸がきゅっと締め付けられるような感じがした。
みんなは私が知らないだけで、いくつも友人とのコミュニティを持っている。そういう付き合いがあるのが普通なんだよね。
今まで自分にそういったものがなかったことの寂しさ、辛さを思い出しつつコンプレックスに思う。自分にも原因があることが分かっていても、やっぱり羨ましさとか恵まれなかった自分の境遇への恨みがなかったわけではない。
───それにもしかしたら、みんな来ているのなら"あの子達"もいるかもしれない。
ふと考えたくない可能性を考えてしまうと、急に胸が締め付けられるような息苦しさがしてきて、鼓動が早くなってくる。
こんな沢山居るのだから来ていたって遭遇する可能性低いのに、向こうだってまさか私が居るだなんて思わないから視界にだって入らないはず。
辛いことはたくさんあった、でもその中で何よりも辛かった"あの子達"の記憶はもう忘れたはずだった。忘れようと思って、立ち直ってきたはずだったのに。
どうしよう、今この場でそんなこと思い出してる場合じゃないのに。
心臓は嫌な程にバクバクと鼓動が早くなって、頭はぐるぐるする。
このままだと、どうにかなりそう。