恋人ごっこ幸福論
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『ご来場の皆様にお知らせします。まもなく20時30分から第70回 横河《よこかわ》花火大会を開始致しますので、有料席をお持ちの方は…』
そのまましばらく5人でぶらぶらと屋台を回っているうちに、花火の打ち上げの時間を知らせてくれるアナウンスが流れた。
「そろそろ花火始まるみたいだし席の受付行きましょ。私パパから預かってきたから」
「英美里ちゃん本当にありがとね~俺らまで便乗させて貰ってありがたい限りですよ」
「ご両親にお礼言っといて、またお礼するんでって」
「先輩らも気遣わなくて良いって言ってるでしょ~?パパも偶然当たっただけだから。お礼は伝えとくけど」
さすがに菅原先輩と橘先輩も気遣うよね。本当にきちんとみんなでお礼しなきゃな…。
英美里ちゃんは気遣わせないように笑ってそう言うけど、やっぱり礼儀として何か考えない訳にはいかない。
そんなことを考えつつ、飲み物を買ってから行こうと自販機へ向かおうとする、けれど。
「げ、売り切れだって。やば」
紗英ちゃんが指差す少し離れた先の自販機コーナーの前で、花火大会の関係者らしき人が別の所で飲み物を買うよう誘導している。
他の所で買うとなると、1番早いのは屋台だけれどペットボトル1本で500円くらいする…となれば。