恋人ごっこ幸福論




今までチャレンジしたくてもしてはいけないと思っていた。でも本当はそんなことないことばかりだった。私が私らしく行動出来るようになったのは、あの日生まれ変わったから。

きっとこれからもそんな経験を沢山していくんだ、珍しく疑いもなくそう思うとわくわくする。



「先輩」

「んー」

「手繋ぎたいです」

「……好きだなあ、これ」



なんて文句を言いながらもそっと手を取ってくれるから、ついにやけてしまいそうになる。繋がれた手にやっぱりドキドキするし、恥ずかしいけれど、それでももっと少しでも触れていたいと思ってしまう。



「あ、」

「わ…あ!」



あともう少しで会場へ、という所まで来た時。大きな花火が打ち上がる。

どうやら丁度始まってしまったらしい。少し急いで行きながらもつい次々と上がっていく煌びやかな花火に目が釘付けになってしまう。



「綺麗…」

「始まったのはしゃーないし、ゆっくり行くか」

「え、でも飲み物早く持っていかなきゃ」

「浴衣。走りにくいだろ」

「あ…」



確かに浴衣だと歩幅も狭くなるし、無理に走ろうとすると気崩れてしまう。そっか、気遣ってくれたんだ。



「…ありがとうございます」

「いいよ、どうせあっちも花火に夢中で気にしないだろ」



せっかく着付けてもらったし、崩したくはない。もうすぐ着く頃だし見ながら歩いて行くことにした。

近くで観ると少し熱気も感じられる大輪の花火。毎年家の2階から、遠くて小さくしか観たこと無かったから不思議な感じ。

花火に魅入ってしまうのが止められない、人にぶつからないよう気配りながらちらちら見ていると、ぱちっと橘先輩と視線があう。





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