恋人ごっこ幸福論
「先輩?間抜けな顔でもしてますか?」
じっと視線を逸らさない彼の綺麗な二重の瞳を見ていると、彼はその大きな目を悪戯っぽく少し細めて。
「ううん、花火バックの浴衣って良いなって思っただけ」
「え、」
「あと水族館の時も思ったけど、お前のまとめ髪結構好きだわ」
「えっ…えええ~もう~」
さらっと唐突に言われた褒め言葉に顔がどんどん火照っていく。
「まーた駄目か、」
きっと今真っ赤になっているんだろう、嬉しそうに笑う橘先輩から顔を隠して必死に抑えようとする。
「私橘先輩と居る限り一生駄目な気がする…」
「一生?大袈裟な。きっと今だけだよ」
「ううん、…1年後も絶対貴方にドキドキしてる。絶対」
間違いない、絶対ドキドキしてる。これだけははっきりそう思えるくらい好きだもん。
「そっか、じゃあしっかり考えなきゃな」
「もし来年も一緒に居たら…今度は橘先輩も浴衣着て来て欲しいです」
「浴衣?……うーん、もし一緒に居たらじゃあそうしてやるよ」
「はい、絶対一緒に居ます」
「そう?」
絶対、一緒に居てみせる。橘先輩の顔を真っ直ぐ見つめて心にそう決意した。