恋人ごっこ幸福論
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そのまま花火を観ながら歩いていると、ようやく予約席の近くまで辿り着いた。事前に教えてもらっていた場所を探す。
「やっと着いた~…」
「なんやかんや観ながらだと時間掛かったな」
かなり待たせちゃったな、少しだけ小走りで移動しながらきょろきょろと3人の姿を探していると。
「…緋那?」
急に後ろから名前を呼ばれて、つい振り返る。声の先には綺麗な金髪の日本人離れした顔立ちの男性がじっとこちらを睨みつけていた。
「やっぱり、緋那か」
「え…」
同じ名前の人だろうか、と辺りをきょろきょろするけれど彼はずんずんと大股で近付いてきて、私の前で立ち止まる。
どうやら彼が名前を呼んだ"ヒナ"は私で間違いないようで。
「会いたかった!!」
一瞬の隙に両手をガシッと包み込まれて、見ず知らずのその人は何故だかきらきらと目を輝かせていた。