恋人ごっこ幸福論




「とりあえずもう花火終わったし時間も遅いから、今日は帰ろっか!危ないし女の子らは送って帰るよ~」

「あ、でも緋那ちゃんだけ逆方向なんすよ。てことで橘先輩」

「分かってるっての、神山送ってくから菅原は黒田と筒井な」

「りょーかいりょーかい。じゃまた補講でね~」

「ひぃちゃん気をつけてね!」

「帰ったらLINEちょうだい」

「うん!じゃあバイバイ!」



そうして、英美里ちゃん紗英ちゃん、菅原先輩の3人と駅のホームで別れて橘先輩と2人になる。



「神山どっち方面?」

「宮前川《みやまえがわ》方面です。そういえば先輩は…」

「俺もそっちだから。気にすんな」

「そっか、良かったです」


そうこう話すうちに電車がホームに入ってきて、人の流れに沿って乗車する。

花火大会帰りの車内は通勤ラッシュ以上にかなり混雑していた。乗客が乗り降りする方と反対側の扉にもたれかかって、車両の揺れに身を任せる。

隣をそっと見上げて、橘先輩と一緒に帰ってることを再認識するとさっきまで怖い思いしてたのに嬉しくなってきてしまうから本当に単純だ。



「…お前よく1人でにやついてんな」

「え、にやけてますか?」

「うん、気が落ち着いたならいいけどさ」




そう言うとぽん、と髪が崩れないように頭を撫でられてついキュンとしてしまう。意味なんかないだろうけど、さらに舞い上がってしまいそうだ。






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