恋人ごっこ幸福論
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週明け、いつも通りの時間に英美里ちゃん、紗英ちゃんと学校の最寄り駅で遭遇する。
「おはよ~!ひぃちゃん一昨日ぶり~!」
「おはよ、昨日は何もなかった?」
「おはよう、2人共。うん、いつも通り」
「よかった、家の周辺とかうろついてるんじゃないかハラハラしてたからさ」
「さすがに大丈夫でしょ~さぁちゃんったら心配し過ぎなんだから」
「とか言いつつ英美里ちゃんだってホッとした顔してんじゃん」
「ふふ、2人共ありがとう」
そんな風に心配してくれる姿を見ていると、まだ心配してくれていた2人に朝1番に会えて今日はラッキーだ、なんて思う。
夏休みでも同じ様に補講へ行く学生が多いのか、いつもとあまり変わった気のしない駅のホームを抜けて学校へ向かう。
いつものように2人の推しの話や、何気ない出来事の話をしながら歩いて行く普段通りの登校時間。
「あら、校門の前なんか騒がしくない?」
英美里ちゃんが何やら不思議そうに立ち止まって、つい私も足を止める。確かに、校門の辺りでうちの高校の生徒達が何かにちらっと視線を向けながら通っているのが見える。
何かあるんだろうか、道行く人の隙間から覗き見てみると。
「おい、神山緋那は知らねぇか?」
花火大会の日に絡んできた金髪の男の人が、登校してくる学生達にそう尋ねていて。
問いかけられた学生達は、大抵気づかない振りをして早足で逃げているようだ。その彼の隣では、あの日は見なかった別の男性が一緒に誰かを探しているかのように登校してくる学生を見ていた。