恋人ごっこ幸福論
真面目で、いつもバスケに一生懸命な姿も凄く好き。
入学してから、橘先輩を追いかけて見ているだけで好きなところが日に日に増えていって、その度に幸せを感じた。
いつも貴方の隣で過ごせたら、それはきっと幸せどころじゃなくなってしまうんじゃないだろうか。
「緋那ちゃん」
そんなことを思いながら見入っていると、菅原先輩が何やらいつもより真剣な様子で呼びかけてくる。ゆるくて、おちゃらけたいつもの雰囲気ではなくてつい少し背筋が伸びた。
「どうかしました?あ、もしかして、ここ邪魔ですかね!すぐ移動しますね」
「ううん、それは大丈夫。あのね、緋那ちゃんが本当に橘のこと好きなら…いいこと教えてあげるよ」
「?」
いいこと?なんだろう。菅原先輩は周囲に聞こえないように警戒しながら屈むと、こそっと耳元で教えてくれる。
「朝7時過ぎくらいかな、体育館来てみな。橘1人で自主練してるはずだから」
「え」
「緋那ちゃん、放課後は30分もいられないんでしょ。女の子達が見に来る日もあるし全然話しかけられないだろうから、朝大丈夫だったらそっちにも行ってみなよ」
「朝は…少し早く起きて準備すればいいだけだから全然大丈夫ですけど…でもなんで?」
どうして、それを私だけに。
菅原先輩はいつも私に気さくに話しかけてくれるし、本気で応援してくれている。でも別にそこまでしてくれる理由なんて思い当たらない。