恋人ごっこ幸福論
「…いつ俺が、お前が神山を好きで気に食わねえって言ったんだよ」
「あ゙?忘れたのか?テメエ花火大会の日言ったろ!緋那に触るなって!さっきも俺のこと睨み付けてただろうが!」
「変質者野郎だからだよ!こんなんに好かれる神山には同情するし、変質者から守んのは当然だろ」
「変質者じゃねえ!つーか理性的な理由ばっか並べやがって。普通自分の女好きって言う男気に食わねえって思うだろ、余裕かます程自分に自信あんのか?」
「彼女つったって好きかまだ分かんねえんだからそこまで考えないだけだよ。うっさいな」
「は?今なんつった?」
「馬鹿、橘!駄目だろそれは言っちゃ」
「え?あー…そっか」
つい勢いに任せて言ってしまったのか、お試しの恋人関係だと口にしてしまった橘先輩は気まずそうに呟く。
橘先輩と私が両思いじゃない、そのことを知った玲央ちゃんが黙っている訳もなく。
「…ふざけんなよ!本気でもねえくせに、」
「玲央ちゃんやめて!」
そのまま拳を振り上げて橘先輩に殴りかかろうとする玲央ちゃんのシャツを引っ張る。
「私がそれでいいから付き合ってるの。だから橘先輩を傷付けないで」
「良くねえだろうが!緋那のことを愛してない男が隣に居るのはぜってえ駄目だ!」
「そんなのこれから好きになってもらえばいいだけでしょ?私今その為に頑張ってるし、先輩もきちんと向き合ってくれてる」
玲央ちゃんからしたら納得いかないかもしれないし、皆からも心配されたりもしたけど、でも真剣にお付き合いしてる。
その事だけでも分かってもらえれば玲央ちゃんの気も治まるはず。真っ直ぐ玲央ちゃんを見つめてそう言えば、狼狽えたのか黙り込む。
これで解決だ、そうほっと安心した暫しの後。