恋人ごっこ幸福論
「何やってんだよ」
「…ついに来やがったか」
「橘先輩」
「さっきからこの金髪バカが女子生徒に纏わりついてるって聞いたから来たらやっぱりそうか」
溜息をつく橘先輩は呆れつつも、玲央ちゃんから引き離して庇ってくれる。助けに来てくれるのは有り難いけど、この状況大丈夫かな。そう思っていたら案の定玲央ちゃんが橘先輩を睨んでいて。
「邪魔してやるって言ったからな。まずはテメエに緋那が近付かないようしてやる」
「自ら嫌われることしてるだけじゃねえか」
「最終的に好かれりゃ問題ねえ」
「…頭おかしいんじゃねえの」
橘先輩は心底理解出来ない、とでも言いたげな軽蔑した目で玲央ちゃんを見た後、すぐに私に向き直る。
「やっぱり話にならないな。神山放っといて行くぞ」
「え!?でも、」
「相手したって無駄。付き纏われるのが困るなら休憩毎に様子見に来るよ。それで問題ないだろ」
「それじゃあ橘先輩が面倒だしそこまでしなくても、」
私が自分でどうにか出来ないせいで毎回来てもらうのはいくらなんでも申し訳ない。
「おい緋那は意地でも連れて行かせねえぞ!」
「れ、玲央ちゃん」
「げ、まだやんの」
躊躇している内に、玲央ちゃんは今度は橘先輩の肩を掴んでくる。
「緋那が駄目なりゃお前にちょっかいかけるだけだよ。相手にする気なんかねえのかもしれねえけどな、こっちは別れさせる為ならどこまでもしつこく纏わりついてやるぜ」
「だっるいなお前!離せよ」
「ちょ、ちょっと2人とも!喧嘩はやーめーてー!!」
なりふり構ってなんかいられない、どうにか止めなきゃと割って入ろうとしたけれど。
結局必死に玲央ちゃんを引き剥がそうとする橘先輩と引き剥がされても食らいつく玲央ちゃんの攻防は、休憩時間終了のチャイムが鳴るまで続いたのだった。