恋人ごっこ幸福論
「ほら、緋那ちゃんくらいだから。本気で橘のこと好きで居てくれるの。それに君とならそうなってくれたら嬉しいし」
不思議に思っていると、菅原先輩はへらっと笑ってそんなことを言ってくれる。
な、なんて良い人…!良い人なのは知ってたけれど、まさかここまで良い人だったなんて…!今なら菅原先輩のことが仏のように見えてくる。
「ありがとうございます…でも私が急に朝来たら嫌がられるんじゃないかな」
「大丈夫。素直じゃないだけで本気で嫌がったりしないよ、あいつ緋那ちゃんのことは嫌ってないもん」
「ええ、でも昼間追いかけてついてくるなって言われたし…」
「大丈夫大丈夫!多少鬱陶しがるくらい気に病むほどのもんじゃないよ、あいつの場合」
そうなのかな。軽い菅原先輩の言うことに少し疑念を抱きつつも、彼の言葉に内心少しホッとする。
「じゃあ、早速明日来てみます!」
「うん、是非是非!頑張ってね、可愛いから応援する!」
「なんか最後のが本当の理由なんじゃないです?教えたの」
ぐっと親指を立てる菅原先輩に、英美里ちゃんが呆れながらツッコミを入れた。
ちゃんと話すことが出来るかも分からないし、自分の中で何か策がある訳でもない。でもこれは、昼間分かったことの何倍ものチャンスになる。
絶対に、絶対にものにしてみせなきゃ。隣で何やら言い合いをする友人2人と菅原先輩の姿を眺めながら、そう強く意気込んだ。