恋人ごっこ幸福論
「ま、2人で辛気くせえ中食うより俺が居る方がいいだろ」
「そんなことない!いつも楽しく食べてます!」
我ながら何をやっているんだろう、こんなことでいちいち玲央ちゃんと言い合いしたってどうにもなりそうにないのに。
とりあえず私も食べよう、無視だ無視。玲央ちゃんに背を向けて橘先輩に話しかける。
「橘先輩、今日も良かったらおかず食べませんか?イチオシは肉巻きアスパラと明太子入り卵焼きなんですけど」
こうなったらとことん諦めて貰うよう振る舞うしかない。
私が出来る数少ない橘先輩へのスキンシップ、"おかずを食べさせる作戦"。あえて玲央ちゃんの目の前で仲良く(?)してるところ見せれば諦めてくれるようになる…かも。
とにかくこっちは玲央ちゃんの思うようになりませんってことを証明してみせなくちゃ。
「……餌付けに味占めたな」
「だってこれなら喜んでくれるから…私もやり易いし」
「俺はペットか」
「もっと他の方法も考えたいですけど……ってあっ!!?」
「お、美味いな」
橘先輩と話している間に、玲央ちゃんがすぐ隣まで来ていて。一瞬の隙に玲央ちゃんに卵焼きを食べられていた。