恋人ごっこ幸福論

「理解できないって…まだ恋したことがないってことですか？」

「………あ」


彼の弁解に、思ったことをそのまま問いかけるとしまったという表情をする。

あれ、もしかして聞き返したらいけなかった…？明らかに顔色が悪くなっていく彼に、慌ててフォローを入れようとする。


「えっと、…それなら確かに分からないです、よね」

「…ああ」

「そっか…それでもちゃんと理解しようとしてくれてたんですね」

「まあ、」


だから今まで私のアプローチに対しての反応がなかったのか。

きっと彼なりに自分の未知の感情をぶつけられることにどういう反応が正解なのか、分からなかっただけだったんだ。

何故好意を向けられることに拒否反応を示すのか、彼の意図が分からなかったからはっきりと答えが見えてなんだか勝手にすっきりしてしまう。



「今まで気になる女性とかは？」

「ない」

「でも女の人嫌いじゃないんでしょ？」

「そういう対象は女だと思うけど」


降参した彼から、素っ気なくも、返事が返ってくることをいいことに質問攻めすると、しまいにはぷいっとそっぽを向かれてしまった。

あ、聞きすぎた。と思う同時に照れてしまった彼を見て、なんだか少し意外で同時に可愛いと思ってしまった。