恋人ごっこ幸福論






「そっか…そっか、じゃあもっと頑張らなきゃ」

「……そんななりたいんだ」

「え、それはもちろん!、っ」


勢いよくそう答えると、思わず言葉に詰まってしまう。

何故なら、いつの間にか橘先輩が私のことを覗き込んでいたから。やっぱり、至近距離で彼を見つめてしまうと頬が熱くなっていく。


「また真っ赤」

「駄目だって…言ったじゃないですか」

「言ったなそういや」


ドキドキと鼓動は加速して、恥ずかしくて緊張して仕方ないのに目はどうしても離せない。そうして何もできずにいるとふいに腕を引かれて、思わず前のめりに倒れそうになる。


「……っ、さっきから何ですか」

「へー本当、めっちゃ俺のこと好きなんだな」

「質問の答えになってな」

「観察してんの。そういう感情分かんないからさ」

「え?」


観察、なんで急に?

橘先輩の唐突な行動の意図が分からない。ただ手を取られたまま真っ直ぐ見つめられている中でその意図を考えようにも頭が働かない。


「神山は、俺の初恋の相手になりたいんだっけ」

「…は、い」

「………じゃ、俺と付き合う?」

「…え?」





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