恋人ごっこ幸福論




***



「LINEのQRコードだして」

「え、」

「いいから早く」

「は、はい」



あの後保健室から体育館へ戻ってくると、更衣室裏に呼び出された。

指示された通りスクールバッグからスマホを取り出して画面を見せるといつの間に用意したのか、彼は紺色のカバーの付いたスマホをかざしてQRコードを読み取ってくる。その流れを眺めているとすぐに自分のトークに通知がきた。



「今適当に送ったからそっから追加しといて」

「へ…」

「連絡手段くらい必要だろ」

「そ、うですけど…あ!」



トントン拍子で進んでいる状況が上手く呑み込めない。

連絡先交換しましょう、ってことで間違いないんだよね?

まさか自分のLINEのトーク画面に橘先輩がいるなんて半ば信じられず、挙動不審になっているとそのままさっさと体育館へ戻ろうとする橘先輩。

ま、まだ頭の整理が出来てないのに!慌てて彼の後を追いかける。


「あ、あの!」

「何」

「本当に…付き合うんですよね」

「うん」

「付き合うって恋人同士ってことですよね」


確認に確認を重ねて、こちらを振り返ることなく返事する彼にそう問いかける。

本当に、本当…?信じられずに退散できずにいると、面倒くさそうに顔だけこちらに向けてきて。


「そうだって言ってんだろ。だから、登録しといて」


はっきり要件だけ伝えると、そのまま私のことなど構う間もなく体育館へと入っていった。








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