恋人ごっこ幸福論
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「おい、返事見た?」
その日の放課後、いつものようにバスケ部へ行くと突然橘先輩がやってきて、むすっとした表情でスマホを向けてくる。
え、え、なんで。しかも彼から来てくれるなんて珍しい。周囲の見学に来ていた女子生徒達も、この前に引き続き吃驚した表情でこちらを見ていて、なんだか気まずい。
そう思いつつ向けられたスマホの画面に視線を移すと、LINEのトーク画面が表示されている。勢いで送った昼のメッセージに、橘先輩から返信が来ていたようで。
「あっ!」
急いで自分のスマホで確認すると、私の送った“昨日の出来事は本当に、本当でしょうか”という確認に“しつこい”“そこまで言うなら6限終わったらすぐ体育館来て”という彼からの要求が綴られていた。
「もう部活始まってんだけど」
「始まる前に来てほしかったんですか」
「すぐって書いてんだからそうだろ」
「そうだろって言われても」
意を決して送ったLINEだから、返事を見るのが怖くてずっとスマホ触ってなかったんだもん。
心の中で言い訳していると、脇腹を少し強めの力で叩かれ…いやつつかれる。
「な、なに?痛い…」
「ちょっとひぃちゃん!」
英美里ちゃんと紗英ちゃんが理解の追いつかない顔をして詰め寄ってくる。
そしてそのすぐ隣から同じように疑問を顔に浮かべる菅原先輩が、2人の代わりに問いかけてくる。