恋人ごっこ幸福論




「いやそれがよく分かんないから聞いてんじゃないすか。橘先輩、緋那ちゃんのこと好きじゃないでしょ?弄ぶ気ならやめてほしいんすけど」

「橘、あんまりこういうの外野がとやかく言うもんじゃないけどちょっと理由が…」



まずい、本格的に収集が付かなくなってきた。そもそも最終的に私も受けいれたんだから、さっきから彼だけ責められるのはおかしい。



「あのね、私は全然大丈夫だから!ただまだ実感がないだけで、だから」

「あーもう!うるっせえ!!」


なんとか場を収めようと割って入ろうとしたとき、橘先輩が我慢ならなかったのか声をあげる。


「付き合うってなったからには責任持ってきちんとする気だよ。文句言わせないくらい大事にする」



淡々と、でも真剣に彼がそう告げると3人が口を噤む。

そのとき、彼が真剣に私に向き合ってくれると言っていたことを思い出した。


昨日、付き合うということになってから連絡先を聞いてくれたのは彼からだったし、今日だって堂々と私と付き合うことを報告してくれた。

私が自信無くて何度も確認した時だって、迷わず「そうだ」って言ってくれたし、彼は本当にきちんと私と恋人同士になろうとしてくれているんだ。


あまり実感していなかった彼の考えと交際の事実が、自分の中でしっかり昨日あった出来事だとようやく確信できた気がして。

恋人同士といっても、両想いなわけでもないしこれからもっと頑張らないといけないと分かっているのに、「大事にする」と言われた言葉が頭の中で反芻されて、ときめいてしまう。





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