恋人ごっこ幸福論
「で、どうしてほしい?」
「え?」
そんなふうにときめきに浸っていると、急に橘先輩に問いかけられる。
え、どうしてほしい、とは。問われた意味を理解しようとしていると、彼は続けて質問を投げかけてきて。
「きちんと恋人として大事にするけど、じゃあ神山は恋人になったらまずどうしたいの」
「えっと、今、答えるんですか?」
「うん」
「え、えー…どうだろ。ちょっとそこまで考えたことがなくって」
つまり責任持って交際するつもりだから、私はどういう付き合いがしたいのか聞いてるってこと?
皆の方をちらっと見ると、どう答えるのかしっかり聞く気満々の皆の視線が集まってなんか気恥ずかしい。
「橘先輩はどうしたいとかないんですか?」
「俺具体的にどうするのが正解か分からないから」
「な、投げやり」
「教えてくれるっつったじゃん」
「う」
なんでよりによってみんなの前でこんな話しなきゃいけないんだろ。
問いかけてくる張本人は相変わらずのポーカーフェイスで何を考えてここで聞いてくるのかはさっぱり分からない。
「じゃ、じゃあお弁当」
「弁当?」
「とりあえず、明日一緒にお弁当食べたいです」
明日は金曜日。次の朝練習まで一週間近くあるし、それなら2人でゆっくり話せる時間が欲しい。
そこで今後どうしたいかはきちんと話し合って決めよう、今すぐは思いつかないし絶対にその方がいい。