恋人ごっこ幸福論
「ん、今度は何」
「え、いや~その…橘先輩はいつも購買なのかな、って…」
我ながら何を突然しょうもないこと聞いてるんだと思ったけれど、咄嗟に何か言おうとしたらそれしか出てこなかったんだからしょうがない。この話題でいこう。
「そうだな、弁当持ってくることは無いけど…」
ちらっと彼の視線が私のお弁当に向けられる。
「…毎日弁当?」
「はい。節約になるし」
「へー…いいな、パンばっかじゃ飽きるし」
つい聞かざるを得なくなったのかふとお弁当の話題を私に振ってくれる彼。よかった、なんとかなった。ほっとしつつ続けて話す。
「お祖父ちゃんの分の次いでだと思えば全然苦にならないです。前日の夕飯の残りとか入れてるし…」
「え?まさか自分で作ってんの」
想定外だったのか、吃驚した声を出す彼に、そういえば話していなかったうちの事情を話す。
「あ、うち両親居なくて。お祖父ちゃん仕事してるからいつも家事とかは私がしてるので…ほら、いつも放課後途中で帰るのは家事するためでして」
「…ああ、そうなんだ」
「いや全然隠してるとかでもないし、むしろ当たり前だと思ってたから気は遣わなくていいので!大丈夫ですよ」
「…ならいいんだけど」
私の馬鹿、せっかくなんとかなったのに何で気まずくなるように仕向けてしまうのか。
慌てて困らせないよう弁解した後、話題を変えようとわざとらしいくらい明るく話しかける。