恋人ごっこ幸福論




「私料理だけは本当に好きで、お弁当も毎日どれだけ見た目も味も美味しく作れるか極めてるくらいで。休みの日とか作り置き作るのも楽しいし」

「ってことはじゃあ料理得意なんだ?」

「自分で言うのも変だけど…そうかも、です」

「また控えめで…」


そう言う彼の視線は、卵焼きに向けられていた。

そういえば、さっきから何か見ている気はしていたのだけれどこれだったのか。


「卵焼き好きなんですか?」


そう問いかけると、彼のきょとんとした視線がこちらへ向く。


「…まあ弁当のおかずなら1番好きだけど」

「へ~なんかかわいい!」

「どこがだよ」



思わずそういうとすかさず突っ込まれる。卵焼き好きでずっと見てたなんてかわいいと思ったんだもん。



「砂糖入った甘めの奴派ですか?それとも塩?」

「甘い奴が好きだけど」

「そうなんですか!よかった」

「よかったって何が」

「うちの卵焼きも甘めだから…好きな人の好みに合ってた方が嬉しいなって」

「じゃあ基本味付けは甘めなんだ?」

「うーん、そうですね。料理にもよるけど辛めの味付けはあまりしないしそうなのかも。でも辛い物も食べるし基本美味しい物は大好き」

「あ、それは納得」



あ、共感してもらえた。たったそれだけのことなのに、すごく嬉しい。



「だったら、一緒にいっぱい美味しいもの食べたいです!美味しいって評判のコンビニのお菓子とか、定食屋さんとかそういうの結構聞いたことあって。きっと食べることが好きなら楽しいはず、」


と、そこまで言ってはっとする。

…なんかさっきから、私一方的にずっと自分の話しかしてないけど、先輩嫌になってないかな。


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