恋人ごっこ幸福論





「橘先輩、私つい話し過ぎちゃったけど大丈夫ですか…?」

「なんだよ急に」

「ええっと、なんか出しゃばり過ぎてないかな、と思って」

「え?」



誰かと会話するとき、基本的に相手のことを聞くようにばかりしてきた。

だから、いざ自分の話となると加減が分からなくて。相手に同調するときや、聞かれたことに返すことくらいでしか自分のことを積極的に話さないからたまに不安になってしまう。

…そもそも、少し前まで自分のことを知ってほしいなんておこがましいと思っていたから。

「私に興味を持ってほしい」とか好きになってもらおうとしてたくせに、何を今更言ってるんだって話だけれど。それでも、たまにそう思ってしまう。



「…別に、全然出しゃばってないよ」

「本当ですか?」

「むしろもっと自分のことも話したらいいんじゃねえの。気遣わずに、好きなこと話しなよ」

「でも、」

「それに…俺、別にお前の話聞くの嫌いじゃないよ」

「え、」

「質問振るの下手だからむしろ神山が話してくれるの助かる。反応しねえからつまんなそうに聞いてるように見えるかもしんないけどそんなことないから。もしそれ気にしてんだったら悪かったな」

「あ、そういうわけじゃ…」



もしかして、私がちょっとへこんでるの自分の対応のせいだと思ってる?



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