恋人ごっこ幸福論





「…甘いわね、ひぃちゃん」


けれど英美里ちゃんはキッと厳しい目つきをして私に人差し指を向けてくる。


「とりあえず付き合うってことになったんなら今まで通りゆっくりアプローチなんてしてたら駄目よ!橘先輩は恋愛感情を知れるかもしれないからひぃちゃんと付き合おうって言い出したんでしょ?だったら早く成果を出さなきゃ他にそういう人が出て来た時、諦めてすぐ次にいっちゃうわよ。

一定期間の間に少しでも好意を抱く可能性が生まれなきゃそもそも脈ナシだし、むしろアプローチにタイムリミットが設けられたようなもんよ。

彼女になったからってのんびり構えてたら終わりよ!」

「うっ…確かにそうかも」



「好きになれそうになかったら別れるけど」ってそういえば付き合う前に言われたな。

とにかくあの時は付き合おうって言われたことに吃驚して、深く考えようとはしなかったけれど。今の状況ってチャンスであり、同時に賭けでもあるんだ。


短期間で少しでも彼に意識をさせることが出来たら、その分この関係が上手く継続する可能性にも繋がる。

“そういった感情が分からない”そんな彼の気持ちを、自身も恋愛初心者の私が動かしたいなら、呑気になんてやってられないんだ。



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