恋人ごっこ幸福論
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「神山、LINEの件だけど」
「!はい、えっと…今ここで話す気ですか」
そして放課後。バスケ部へ行くと、昨日に引き続き来て1番に橘先輩が送ったメッセージの件で声をかけてくる。
「どうせ来るんだったら口で言う方が早いだろ」
「そうですけど」
「で、話の件だけど連絡するのは別にいい。部活は次の試験まで休みないから帰るのは無理だから」
「そうなんですね…分かりました。今の時期部活忙しいんですね」
「んーまあ」
…この場で返事終わらせられちゃった、別に構わないけれど。
でもわざわざ私のところに近寄ってきてくれるのは嬉しいな。部活中だし、気を遣わないで今まで通り無視してもらっても全然いいのに。
「じゃ、あとでまた連絡するから」
「はい。私もう少し観て帰りますね、頑張ってください」
「はいはい」
要件を済ませるといつも通り、すぐに練習に戻っていく彼にそう言うと適当にあしらいつつも返事してくれた。
部活観に来てこういう風にやり取りできるのが習慣になりつつあって嬉しいな、つい頬が緩んできてしまいそうになっていると、すぐ傍から痛い視線を感じる。
そっと横目で様子を見てみれば、予想通りその視線は英美里ちゃんのもので。
「これで満足そうにしてる場合じゃ」
「分かってる!分かってるよ…」
厳しい英美里ちゃんの指摘に慌てて言い訳すると「本当に?」と詰め寄られる。
まるで鬼コーチだ、英美里ちゃんに恋愛のコーチになってもらった記憶なんかないけど。