恋人ごっこ幸福論
「いつの間に…」
「私が君に声をかけた瞬間すぐ行っちゃって。さっきも速かったんだよ。あ、っていう頃には彼、君のとこにいたし…私よりも先に気づいてたんだろうね」
そうだったんだ。
自分が気づいていなかっただけで結構周りの人から見たら“危険だ”と思われていたのだろうか。それとも、偶然目に入っただけ?
どちらにせよ、彼は迷うことなく真っ先に私のところに来てくれたんだ。私が死んでしまわないように。
「(ただの、偽善者だと思っていたのに)」
自分はこの世には向いていない。希望なんてないと思っていた。
今日は他人を羨んで勝手に妬んで、卑屈になっていたのにそんな私を本当に気にかけてくれていたんだ。私の事を一瞬でも考えてくれた人がこの世に居た。
「助けてくれたお礼、伝えなきゃ」
この世の中に希望はないと思ってた。
だけど、この日貴方に会ってもう一度だけ希望を信じてみたいと思ったんだ。