恋人ごっこ幸福論
「まあ…まだ数日だしこれからじゃん?もうちょい様子見てからにしようよ」
「さぁちゃんが言うなら分かったけどさあ」
紗英ちゃんがフォローを入れてくれたおかげで、なんとかこれ以上の指摘を受けることは免れられて内心ほっとする。英美里ちゃんは渋々そうだが詰め寄るのはとりあえず止めてくれた。
「ありがとう…紗英ちゃん」
「さすがに今んとこは何も言えないしさ」
「これから頑張ります…」
こういう小さなことに一喜一憂してばかりいられないのも、なかなか困ったものだなあ…。
「じゃあねーバイバイ」
「うん、バイバーイ」
その後いつものように3人で少しだけ見学して、いつものように電車に乗って、3つ目の駅でお別れする。
今日はスーパーに寄る用事もないし、帰宅してからも少し余裕があるな。家に帰ってからの予定を頭の中で巡らせながら家までの道を行く。
「ただいま」
帰宅すると、誰もいない家に防犯目的以外の何物でもない形だけの挨拶をして、ルーティーン化された家事業務を終わらせていく。
洗濯を取り込んで、お風呂掃除をして、夕飯の準備をしていればあっという間に日が落ちて外は暗闇に包まれる。橙色の照明の下で、今日も祖父の帰宅を待たずに夕食を終わらせた。
明日は土曜日だし、今日中に課題やってゆっくりしようかな。自室で課題に使うノートや教科書を出していると、あ、と思い出す。
そういえば連絡取り合ってもいいって言ってたし橘先輩に何か送っとこうかな。「あとで連絡する」って言ってくれてたけど、別に私から送るのに問題は無いだろうし。
…それにもっと攻めていかなきゃって英美里ちゃんに言われたばかりだし。