恋人ごっこ幸福論




***



「…よし、これでいつでも電話できる」


お風呂も入った、寝支度も整えた、完璧だ。
今は10時少し過ぎ。そろそろだろうか、そう思っていた時電話の着信音が鳴る。


「!もしもし」

『あ、出た』


瞬間的に出ると、当然だが大好きな彼の声がする。電話越しだと普段よりも声が低く聞こえる気がするな。



「お疲れ様です…」

『お疲れ様』

「あの、今日の電話の目的は…」

『特にない。ただ何となくLINEまめにするタイプじゃねえしこの方が早いかなって思っただけ』

「なるほど!私も直接声聞ける方が嬉しいし、これも…いいですね」

『ならよかったけど』


顔を見て話すドキドキとは違う、なんだかくすぐったい感情と幸福感が湧いてくる。

橘先輩と電話できる日が来るなんて、ここ数日で信じられないくらい幸せなことが起きすぎてどうにかなってしまいそうだ。



「な、何の話しましょうか」

『何の話でも』

「えーっと、何が良いですかね」



距離を詰めるなら、話題も大事なのかな。その辺り英美里ちゃんに聞くべきだっただろうか、と考えていると。


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