恋人ごっこ幸福論





『…じゃあ、お前のこと教えろよ』

「え?」

『好きなこととか、嫌いなこととかまあ何でも。お互いのこと知るのが大事なんだろ。だから昼の続き教えて』

「はい…」

『その代わり、そっちが聞きたいことあるならいくらでも答えるから』


昨日何したいか聞いたときは、どうするのが正解か分からないからって言ってたのに。

私の提案からちょっと飛躍して“恋人らしいこと”を提案してくれているなんて、なんだかんだ投げやりなようで乗り気でいてくれているんだな。


「ふふふ、分かりました」

『なんだよ』

「ううん、なんでも」


つい電話の向こう側でぶっきらぼうにしながらもいろいろ考えてくれているんだろう姿を想像すると、頬が緩んでしまう。


『…じゃあ、好きな物は?料理は聞いたからそれ以外で』

「うーん、食関連以外ってなると…猫とか、可愛い雑貨を集めたり…特にきらきらしてるもの…とか?子供の頃お菓子コーナーにあった玩具の宝石に憧れがあって今も惹かれる気がします。買ってもらったことはないけど」

『女子は大抵好きなイメージあるな』

「多いですよね、あとは些細なことでいいなら英美里ちゃん紗英ちゃんの話聞くのも楽しくて好きだし、天気のいい日にのんびりするのも好きかも。他は…橘先輩の部活観たり、一緒にいる時間が好き、です」



最後の方は声が小さくなっていってしまったけれど、しっかり言い切った。今ぱっと思いついた"攻める"をしてみたけれどこれいつも通りだ。これくらいしか思いつかないのか、私。




< 84 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop