恋人ごっこ幸福論
「え~~てか菅原先輩試合出るんですか?補欠とかでしょどうせ」
「出れるわ!一応中学からやってんだから俺もそこそこなの!あ、そうそう。橘も勿論出るよ」
英美里ちゃんに言い返した後ちらっと私の方を見て含みのある笑みを向けてくる菅原先輩。
橘先輩、試合出れるんだ!
そりゃ部内では上手い方だと聞いていたから、出られるのは当然なのかもしれないけれど。しばらく部活の休みが無いと言っていたのはこのためだったのだろうか。
「結局ひぃちゃん釣る為じゃないですかあ~」
「そんなことだろうと思ったけど」
「やっぱり彼女になったんだから教えてあげないと駄目じゃん!あいつ無頓着だから聞かれでもしなきゃ絶対言わないしさ」
「緋那ちゃん聞いてないの?」
「うん。全然知らなかった…」
金曜の夜に電話したんだし確かに教えてくれてもいい気がするけれど、わざわざ報告するようなタイプじゃないからなあ。
私も毎日見に行ってるのに試合があるのとか気になりもしなかったから何とも言えないというのもあるけれど。
「そっか、でもおめでたいですね…!いつも練習頑張ってるから橘先輩が出れて私も嬉しいです」
「だよねだよね、でもそれは直接本人の顔見て言ってあげてほしいな」
ちらっと後方に視線を向ける菅原先輩。
え、まさか。釣られて私もそちらを見てみると、そこには期待通り橘先輩が少し離れたところで面倒くさそうに待っていた。