恋人ごっこ幸福論
「橘先輩…!おはようございます、先輩も来てたんですね」
「…無理矢理連れてこられたんだよ」
彼の傍に行くと、その後ろから来た菅原先輩をうんざりするような目で睨み付ける。けれどそれも慣れっこなのか、全く睨まれている本人は気にせずへらへらと笑っている。
…菅原先輩って、いつも思うけれどある意味メンタル強い。
「まあいいじゃん!どうせそのうちばれてたしさ」
「そうですよ。てか彼女に報告しないなんてありえません」
「まじで気が利きませんね」
「うるっせえわ…」
英美里ちゃん、紗英ちゃんも出てきて詰め寄られ、深いため息をつく橘先輩。
2人ともまた橘先輩に噛みついてる、そんなに彼ばかり責めるの止めてほしいのにな。この場をなんとか取り持とうと慌ててフォローを入れる。
「私気にしてないし、大丈夫ですよ!それより、県予選のスタメン入りおめでとうございます!さすがですね!」
「まあ…選んでもらったのはありがたいけど」
褒めると、困ったようにそれだけ返す橘先輩。
あまり騒いだり褒められたりするのは得意ではなさそうなのに、少しばかり喜んでいるようにも見える。やっぱりなんだかんだ言って嬉しいのかなあ。
でもそうだよね、毎日あんなに一生懸命バスケに打ち込んでいるんだもん。
努力の形が報われれば、きっと誰だって少なからずそう思うはずだ。