恋人ごっこ幸福論
「一応、これでもアプローチしてる最中なので…出来たらそういう場を設けてほしいってのもあります」
「それ言うのかよ」
「だ、だって下心全開なことを隠すのって罪悪感あって…!」
「ひぃちゃん、でも駆け引きってそういうものよ…」
英美里ちゃんはドンマイ、と肩に手を置いて憐みの目を向けてくる。
紗英ちゃんまで同じように見てこなくてもいいじゃない、どうせ隠そうとしたってばれちゃうんだもん。それならいっそのこと言ってしまおうと思ったんだけど。
「…まあ、別にお前が作りたいんだったらいいけど」
「本当ですか!」
「本当だって」
どうやら金曜の卵焼き効果があったのか、橘先輩はあっさり承諾してくれた。
「ありがとうございます!気合入れて作りますね」
「卵焼き旨かったし期待はしとくわ」
「やった、嬉しいです」
特に表情は変わらないし、相変わらず何か変わった感じはしないけれど、「期待しとく」という言葉でやる気が満ちてくる。