恋人ごっこ幸福論
「てかひぃちゃんの卵焼きなんかいつの間に食べてんのよ?」
「あ、金曜に一緒にお昼食べた時にあげて…」
「まじ?この前そんなこと言ってなかったじゃん」
英美里ちゃんと紗英ちゃんが意外そうに関心しながら私の顔をじっと見つめてくる。
なんだろ、私何かしたかな。思わずたじろぐと。
「ひぃちゃんってそういう重要なことちゃんと私らに報告してくんないよね~」
「え」
「それな。ちゃんと進展報告してよ」
「ええ、でも報告するほどのことなんて」
「なんだっていいのよ!ほらどうせまだ何か隠してるんでしょ?今すぐ言ってみなさい!」
「えええ~」
がしっと前後から捕まえられてしまう。
報告ってそこまでするものなの?あまり考えたことなかったけど、と今まで知らなかった理解をするとともに、開放されたくて橘先輩に助けを目で求める。
目があった彼は、少しだけ瞬かせた後ふっと薄く笑った。笑ってないで助けてほしい、と思いつつも想定外の表情にドキッと心臓が鳴る。
絶対ちょっと馬鹿にしてる、面白がってる。そう思うのに全然嫌じゃない。
「ちょっとひぃちゃん!」
「な、なに」
「何じゃなくて早く吐きなさいよ!ほら!」
「ここでは無理!」
結局この攻防は、朝のHR5分前のチャイムが終わるまで続いたけれど。
案外2人の言うように少しは進歩しているのなら、もっと頑張ろう。絶対に喜んでもらえるお弁当を作って見せよう、そう思う気持ちでいっぱいだった。