宿敵魔王は元カレでした。
そのまま足元に魔法陣を描くと、外にいる配下のモンスター達に攻撃を止めるように指示を出す。
そして……魔法を発動させると、そこには魔力も何も持たないスレーンがいた。
角も魔王の文様が刻まれた瞳も何も無い、一人の人間になっていた。
「これでこの世界に魔王はいなくなった。めでたしめでたし」
「そんな呆気なく戦いが終わってもいいの?」
「いいも何も、これは俺たちの物語だ。誰かに咎められる必要もないだろ?」
自信満々に言うスレーンが愛らしくて、思わず零れた笑みに私は流れのまま聖剣をその場に刺し、スレーンが来ていたマントを掛けた。
これで魔王と勇者の物語は終わった。
啀み合う必要も、憎しみ合う必要もどこにもない。
私はただ目の前にいる愛する人と、手を取って生きていく道を選びたい。
「じゃあ、帰ろう。私達が一緒に生きていく街に」
「だな」
スレーンの手を取って大広間を後にした私達を、取り残された聖剣とマントが静かに見送っていた。