宿敵魔王は元カレでした。
「……」
「……」
お互い沈黙が続き、下から上までじっくりと眺め合う。
どこからどう見てもそうなんだよな〜瓜二つなんてことあるのかな〜。
って、いやいやいや!!!ちょっと待ってよ!!
「元カレかよ!」
「前世で付き合ってた彼女かよ!」
突っ込んだタイミングすらも被って声が反響し合う。
……これは一体どう言うこと?なんでここに?
頭が追いついてこないのは私だけじゃないようで、魔王も手で頭を押さえている。
「あの〜……魔王ですよね」
「はい。魔王です。それで?貴女は勇者ですか?」
「ご存知の通り勇者アイリーンと申します」
「この度は、どうも。ようこそ魔王城へ」
「いや〜すごいお城ですね〜って、違ーーう!!!」
パニックになりすぎて考えることを止めようとしている!!それは不味いのよ!!
目の前にいるのは前世の元カレではなくて、魔王なのよ!!
なのになんでこんなに久々に会った感覚が抜けなくて、ちょっと探りを入れたくなってるのよ!!
「前世でもあんたって奴は私を裏切って!!この世界でも悪事を働こうって魂胆?どうかしてるわよ!!」
「裏切った?!それはそっちが変に勘違いしたせいだろ!」
「勘違いなんかしてないわよ!私見たのよ!!スマホに知らない女とのやり取りが表示されたのを、しっかりとこの目でね!」
“この前はありがとう。お陰で助かったよ。今度お礼しに家に遊びに行くから待っててね(ハート)” って表示されてあるのを、はっっっきりと見ました。
彼女がいる男に手を出すだけじゃなくて、家にも遊びに行く?しかもハートマークまで付けるなんて、バッカじゃないの?!
それにほいほい流されて私との連絡を怠ったのは紛れもなく、あんたでしょう!!
それを勘違いで一纏めにしようなんて甘い考えを転生した今も尚持ってるなんて、この魔王絶対に成敗してやんだから。