宿敵魔王は元カレでした。
「連絡の頻度が落ちたのは一体何よ。他の女が出来てそっちに時間割いてたんでしょ?」
「お前なあ!」
急に大きな声で怒られて、モンスター相手にも驚くことなんか少ないのにスレーンのその声にビクリと体が反応してしまう。
ズカズカとこちらに近づいてきたかと思えば、私の動きを止めていた魔法を解くとそのまま私のことを抱きしめてきた。
「なっなっ……!!!」
「どれだけ俺がお前のことを愛していたか、今ここで証明してやる」
困惑する私を放っておいて苦しくなるほど強く抱きしめたと思えば、今度は私の顎をくいっと持ち上げた。
そして唇に触れた温もりにスレーンの体を引き剥がそうともがくけれど、その力と反比例するように引き寄せられてしまう。
キス……それがこの世界ではどんな意味を持っているのか、あんたは知ってるの?
心に決めた相手にだけ全ての愛を捧げるその行為と、知っているの……?
「んっ……」
吐息が漏れて体に力が入らなくなっていくのが分かり、抵抗することをいつの間にか止めていた。
スレーンの唇が少し離れたと思えば再び私の唇を……甘く貪る。
私達の甘い蜜が混じりあってできた糸が、弧を描いて小さく光る。
彼の唇は私の唇だけでは飽き足らず、首筋へ、そして耳を小さく噛むと甘く囁いた。
「一度惚れた女を手放すとでも思ったのか?」
「まっ……て……」
「待たない。愛してるよ、アイリーン。この世界でも君は俺の大切な人だ」
なんで……こんなことっておかしいじゃない。