【短】泣きたいほどに叫びたいほどに、私はただきみが好きだから
「なー?叶津ー?この人誰?」

嫌な予感は必ず的中する。
でも、私は平静を装って、全く気にしてませんと言った風な顔をして、呆れ声を出す。

「いきなりなによー?彼女は私の大事なお姉さんだよ」
「名前は?」
「直己先輩。素直のなお、に己でなおみって読むの。私らの2つ上。って、なんでそんなこと聞くの?」

言わないで。
お願いだから、言わないで。
そう思っているのに、神様は何処までも意地悪だ。

「俺…好きになったかもしんない」

たかが写真一枚で何が分かるの?
そう言いたかったけれど、真っ赤になって頬を掻いてる岳人を見てしまっては、何も言えなかった。
それどころか、どうしてもと押し切られて二人の仲を取り持たなければならなくなって、私はその度に笑って笑って…自分の中の「好き」を飲み込んだんだ。

だって、これから私は県外の高校に進学をする。
岳人は、地元の名門校への進学が決まってる。
お互いにもう会えないかもしれないのに…今更この関係は壊せない。

「…ま、いいんじゃないの?振られたら慰めてあげるよ」
「ひっでぇな。…ま、叶津が慰めてくれんなら、ひとっ走り告白でもしてくるか!」

その後のことはあまりよく覚えていない。
いや…思い出したくもない。

なお先輩がまさか岳人の告白を受け入れるなんて思っていなかったから。
< 3 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop