【短】泣きたいほどに叫びたいほどに、私はただきみが好きだから
「叶津?」
「んー…?」
「ありがとな」
「…何が?」

ぽこんと、机に座ってブラブラさせていた足にぶつけると、凄く真面目な声が頭の上から振って来た。

「なによー?そんな真面目な顔してさ?」
「…や。なんでもない。ただ、それが言いたかっただけ」

くしゃくしゃ

岳人の温かくて大きな手が私の頭をゆっくりと撫でた。

「高校行っても、俺のこと忘れんなよ?」
「……」
「…忘れんなよ…」

なんで、今更そんなことを言うの?
それは、私に対してどれくらい悲しい意味を持つか知ってるの?

私は、岳人の手をやんわりとどかして、無理やり笑顔を作った。

「岳人のことなんて、向こうに行ったら、一番に忘れてあげる」
「…やっぱ、ひでぇーな。叶津は…」

酷いのは、そっちのせい。
だって、私は。
何時だって、泣きたいほどに叫びたいほどに…ただきみが好きなんだから…。

溢れそうになった涙を上を向くことで、なんとか抑えて、少しだけ震える声で私は言った。

「ばーか。忘れるわけないでしょーが。私達親友なんだから…ね?」

重い重い石のような鎖を、自分から掛けて…私はたんっと机から降りた。

「叶津…?」
「それじゃあ…ばいばい、岳人」
「お前、なんで、泣いて…」
「"卒業"だから、だよ。じゃあ…ほんとに…ばいばい」

私は岳人の静止も聞かずに、教室を飛び出した。

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