眠れぬ夜に花束を

(かがり)、」


今日も、同じ名前を呼ぶ。返事がないのはいつものことだったけれど、じく、と胸の奥のほうがにぶく痛んだ。


裸足で冷え切った床を踏んだ。このままつま先から凍り付いてしまえばいいのに、と思った。進むことを強制されたくなかった。止まった時間の中で、何も知らず、幸せに笑っていたかった。


もう思い出が溶け出すことはないのに、今でも君が笑う夢を見る。あどけなさが残る出会った頃のまま、声変わりの途中の少し枯れた声で、記憶の中の彼は私の名前を呼ぶ。


どうあがいても醒めてしまう幸せに、のぼる太陽を恨めしく思ったりもした。脳にこびりついたノイズが不快でたまらない。


もう少しだけ、夢の続きが見たかった。ただそれだけだったんだ。
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