眠れぬ夜に花束を
人生十五年目。私は彼と出会った。素直になれない年頃というやつで、それでも私は彼のとなりにいられるだけで幸せだった。
人生十六年目。私は少し欲張りになった。彼を独り占めしたくて、可愛くないやきもちを妬いたりして。彼との時間のすべてが愛おしかった。やっぱり私は幸せだった。
人生十七年目。彼は素っ気なくなった。私が何度話しかけようと、それに返事が返ってくることはなくなった。
だらだらと、未練と無謀でつながる糸に縋って、それに鋏を入れる勇気も出ないまま、人生二十年目。いつの間にかお酒が飲める年齢になってしまっていたことに絶望した。
──お酒が飲めるようになったらさ、朝まで一緒にだべろうね。
小指と小指を絡ませて、そんな約束をした。その約束が叶うことはもうないのだと知った夜、まるで足元から自分の世界が崩れていくような不安に、思わずえずいてしまった。
針千本、私ひとりには荷が重い。大人になんてなりたくないね。