眠れぬ夜に花束を
「だからさ、篝、……早く迎えに来てよ」
力が抜けて、へたりと床に座り込んだ。
かすれた声は、きっと彼には届かない。歪んだ視界に見えた、吐いた息は白かった。
だんだんとぼやけてくる記憶にぞっとする。ずっと覚えていられるなんて、思い上がりだと思い知る。
私が好きだった彼はもういない。信じられずに面影を追ってしまうのは、そんなに悪いことだろうか?
きっと、彼には怒られてしまうけれど。
メニュー